二宮清純『天才セッター中田久美の頭脳(タクティクス)』(ISBN:4104590010)

  1. ちょっと大げさに見えるタイトルがこの本のすべてを表している。著者が「中田久美」へのインタビューを通して見たものは、「天才」と「セッター(=中田久美にとってのバレーボール)」と「タクティクス(中田久美のバレーに対する方法)」だったのだろう。
  2. 「天才」については、私的な定義を得ることができた。また、インタビュー以外にも著者によるスポーツを題材としたコラムがあるが、これも刺激的で、例えば「あるスポーツの興隆は底辺の拡大にある」という点は納得できる。最近の女子バレーボールの不調には、「世界に通用するため」に全日本が大型化した(つまり、普通の体格の選手は滅多なことでは代表選手になれない)ことも関係するのかもしれない。
  3. 私的な「天才」の定義は、まず「何でそこまで」というくらいに一つのことに取りつかれた人であり、取りつかれたものに対して一つの明確なイメージを持ち、それを自分の思い通りにするための技術の研鑚を怠らない人である。少なくともセッターである「中田久美」にとってのバレーは、「相手のセンターブロッカーを如何にしてかわすか」というものであり、そのためのアイデアを四六時中考え、トスの技術を磨きつづけたために「天才」と呼ばれたのだろう。

※2ヶ月ほど前に読了。再読せず記憶に基づいて記述