円堂都司昭『ゼロ年代の論点』(ソフトバンク新書)

2000年から2010年まで(いわゆるゼロ年代)に発表された「批評」を元に、その論点とされるものの「軸」と「方法」に焦点をあて、ゼロ年代全体の議論を再構成しようとした本。「軸」は「情報空間」と「物理空間=生活環境空間」であり、「方法」はそれぞれの…

最近のオタキング

こういうことを始めたらしい。今日知った。

「おたく第1世代」は「オンライン→オフラインコミュニティ造りの第1世代」でもあった、ということは知られているのだろうか?

『ぼくたちの洗脳社会』は、今でもWEB上で全文が読めるので、興味のある方はどうぞ。ひょっとすると、若い人だと著者の岡田斗司夫を知らない人もいるかもしれないので、経歴などはWikipediaを参照ください。1958年生まれの、通称「オタキング」。正真正銘の…

岡田斗司夫『ぼくたちの洗脳社会』(朝日文庫)

簡単に要約すると、 現代では、かつての「科学」や「経済」のような一元的な価値観は成立しない(それらがもたらすとされた「発展」というプラスイメージが「限りある資源」という現代人なら誰もが持っている閉塞感によって否定されるため) かわって、個人…

柴田淳「一緒に帰ろう」

YouTube にもあがってるんですが、iTunesStoreでの試聴をお薦めしておきます。アルバムの4曲目ですね。

the pillows 「My Foot」

※iTunesStoreでの試聴はこちら(1500円版がなくなってるなあ)

昨日、思わず広谷順子「道」を紹介してしまったので、「道」をお題にあと2曲ほど紹介しておきます。

広谷順子「道」

1979年発表の、NHK「みんなの歌」でも放映されていた国際児童年の歌。 YouTube に上がっているとは思わなかった。 作曲は村井邦彦(代表曲として、「翼をください」「虹と雪のバラード」などがある)。 「道」は、もう手に入らないだろうと思っていたんだ…

よしながふみ漫画研究会

よしながふみのマンガの描き方に興味を惹かれたという人は、上記2作品あたりから増えていたようで、2004年5月には、藤本由香里・竹宮恵子・夏目房之介によって、『愛すべき娘たち』『西洋骨董洋菓子店』などのよしながふみ作品を分析する研究会が開かれてい…

よしながふみ『愛すべき娘たち』白泉社

よしながふみについては、『西洋骨董洋菓子店』の感想を書いたことがありますが、そこで紹介したインタビュー記事を読んで改めて思ったのは、よしながふみという漫画家は「物語をどのように作っていくか」ということにとても自覚的な人なんだな、ということ…

よしながふみ『西洋骨董洋菓子店』全4巻 新書館

男4人だけで営業している西洋菓子店「アンティーク」。 その店を舞台に繰り広げられる人間模様を描いたコミック。前半はほぼコメディと言っていい内容だと思いますが、2巻の終りで一人の登場人物の秘密が明らかにされてからは、結末に向かって一直線に話が…

よしながふみインタビュー

昔の「Webとらのあな」に『フラワー・オブ・ライフ』連載時のよしながふみのインタビューが載っており、今でもインターネット・アーカイブから読むことができる(こちら)。同じところから『ハチミツとクローバー』連載時の羽海野チカのインタビューも読める…

よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ(全4巻)』(新書館)

最初の1、2巻は普通に高校を舞台にした学園コメディ風なのだが、3巻からは、あるテーマを中心に話が周り始める。注意して読むとわかることだが、3巻の各話には「感情を表す(というか爆発させる)」シーンが含まれ、4巻では「あることを相手に伝えるか伝…

たまに別の場所で書いていた読書メモなど復活させてみようかと思います。最初のうちはコミック中心になりそうですが。

『風の谷のナウシカ』

「宿命」と「亡霊」というテーマがうまく融合した作品として、コミック版『風の谷のナウシカ』をあげることができるだろう。アニメ映画版では「宿命」というより「予言」の部分が前面に押し出されてシンプルにまとめられているが、コミック版は「亡霊」の部…

夏目房之介『マンガの深読み、大人読み』、稲葉振一郎『オタクの遺伝子』

2冊とも2005年前後に出版されたマンガ評論本。『マンガの深読み、大人読み』の方は、後の夏目房之介・漫画学の萌芽が多く含まており、全体的には幅の広い話題を扱っているが、第2部「『あしたのジョー』&『巨人の星』徹底分析」が間違いなく最大の読みど…

デフレ時代の消費行動と社会企業家

デフレ時代はどんなカテゴリのどんな商品も似たり寄ったり、価格も品質もそう変わりはしない。少なくとも、消費者を動かす上で「価格」のランクは下がっているのではないだろうか。そんななかで、企業・商品をアピールする方法として、このところ目につくの…

ユリイカ2011年1月臨時増刊号『総特集:村上春樹』青土社

主に2000年代の村上春樹作品(日本においては2000年『神の子どもたちはみな踊る』から2009年『1Q84』までと、海外における翻訳作品の受容のされ方)に焦点を絞った評論集。村上春樹についてはほぼ語り尽くされた感もあるが、'00年代云々より、評者・インタビ…

仲俣暁生『極西文学論』晶文社 極西文学論―West way to the world作者: 仲俣暁生出版社/メーカー: 晶文社発売日: 2004/12/25メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 23回この商品を含むブログ (61件) を見る

前著『ポスト・ムラカミの日本文学』と同様、日本文学を題材に同時代の日本文化を描写しようとしたもの。前著に引き続き、現在の日本文学(=日本文化)は「アメリカ文化」の影響下にあり、「過去の日本文化」からは断絶している、という視点を継続・発展さ…

仲俣暁生『ポスト・ムラカミの日本文学』朝日出版社(2002年5月発行)文学:ポスト・ムラカミの日本文学 カルチャー・スタディーズ作者: 仲俣暁生出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2002/06/01メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 36回この商品を含むブログ (61件) を見る

現在の日本文学は、過去の「文壇」とは完全に断絶したものとなっており、それは 70年代末の二人のムラカミ=「村上春樹」「村上龍」の登場に始まり、80年代の日本文化において決定的なものになったのだ、ということを示した本。現在の日本文学(だけでなく日…

仲正昌樹「加藤典洋におけると」(雑誌「情況」 2003年11月号)

高橋哲哉との「敗戦後論」をめぐる論争を手がかりに、加藤典洋のが批判されている。この論争における加藤の主張は次のようなものだ。「敗戦」以降、それまでの日本の「共同体」は崩壊したしかし多くの日本人は、いまだにその崩壊した「共同体」に依拠した言…

加藤典洋『テキストから遠く離れて』講談社

テクストから遠く離れて作者: 加藤典洋出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/01/17メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (25件) を見る 「作者の死」をめぐる、バルト、デリダ、フーコーのテキスト論を著者なりに整理しながら、著者自身の批…

季刊「理戦:特集リチャード・ローティ」74(2003年秋号)

特集の中から、 野家啓一:アブノーマル・フィロソフィーへの挑戦 北田暁大:「徴候」としてのリチャード・ローティ 仲正昌樹:「民主」と「愛国」のプラグマティズム を読みました。最初の2つは談話を文書化したもののようです。 「野家啓一:アブノーマル…

北田暁大「嗤う日本のナショナリズム」(雑誌「世界」2003年11月号)

岩波の雑誌に「2ちゃんねる」論が載っているらしい、ということで読んでみたのだが、「2ちゃんねる」に限らず、最近の「繋がっている」ことを重視するコミュニケーション様式についての論考として面白かった。簡単に議論を紹介すると、80年代の日本のマス…

仲俣暁生「極西文学論序説 (3)」(群像2003年11月号)

今回は、「旅行」→「その準備・装備」→「『バトル・ロワイアル』と『死のロングウォーク』」→「スティーヴィン・キングと村上春樹にとっての「恐怖」」→「現代日本作家(主に星野智幸作品)にとっての「日本」」→「森」、という流れの中で、「極西」という言…

excite book: 三浦雅士インタビュー「村上春樹と柴田元幸とアメリカの憂鬱」

URL:http://media.excite.co.jp/book/presents/miura/これを読んでおけば、『村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』の評論部分は読まなくても良い気がするな。それから二人は、自分たちの思想を表現するには翻訳が一番ふさわしいことに、潜在的に気が…

三浦雅士『村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』新書館

村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ作者: 三浦雅士出版社/メーカー: 新書館発売日: 2003/07/10メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 6回この商品を含むブログ (24件) を見る 最近の日本の文学には、「村上春樹の小説」と同様、「柴田元幸の翻訳」が大…

笠井潔、加藤典洋、竹田青嗣『村上春樹をめぐる冒険』河出書房新社(ISBN:430900699X) ※現在、品切れ中のようです

「村上春樹」と彼が描いた「1980年代の日本」をめぐって、村上春樹と同世代の批評家3人が交わした鼎談が収録されている。この鼎談自体は、1990年(昭和天皇崩御とベルリンの壁崩壊の1989年と、湾岸戦争の1991年の合間)に行われた。ここで3人が「村上春樹…

加藤典洋『アメリカの影』講談社学術文庫(ISBN:4061591827)

1985年に刊行された、加藤典洋の第1評論集。江藤淳が田中康夫『なんとなく、クリスタル』を誉め、村上龍『限りなく透明に近いブルー』を全面否定した事実から始まる「アメリカの影」、'60年代〜'80年代の東京郊外を舞台にした小説を論じた「崩壊と受苦」、…

大塚英志「スターバックス文学論(なんだか)」小説TRIPPER 2003年秋号

また例によってわざと物議を醸すような書き方をしているが、提示されているのは興味深い問題ではある。'80年代文学で行われていた方法、例えば商品ブランドのような、時代に特有の「固有名」の羅列の中に人物を描くことジャンル違いの分野からの引用を多く行…