2003-01-01から1年間の記事一覧

季刊「理戦:特集リチャード・ローティ」74(2003年秋号)

特集の中から、 野家啓一:アブノーマル・フィロソフィーへの挑戦 北田暁大:「徴候」としてのリチャード・ローティ 仲正昌樹:「民主」と「愛国」のプラグマティズム を読みました。最初の2つは談話を文書化したもののようです。 「野家啓一:アブノーマル…

北田暁大「嗤う日本のナショナリズム」(雑誌「世界」2003年11月号)

岩波の雑誌に「2ちゃんねる」論が載っているらしい、ということで読んでみたのだが、「2ちゃんねる」に限らず、最近の「繋がっている」ことを重視するコミュニケーション様式についての論考として面白かった。簡単に議論を紹介すると、80年代の日本のマス…

仲俣暁生「極西文学論序説 (3)」(群像2003年11月号)

今回は、「旅行」→「その準備・装備」→「『バトル・ロワイアル』と『死のロングウォーク』」→「スティーヴィン・キングと村上春樹にとっての「恐怖」」→「現代日本作家(主に星野智幸作品)にとっての「日本」」→「森」、という流れの中で、「極西」という言…

excite book: 三浦雅士インタビュー「村上春樹と柴田元幸とアメリカの憂鬱」

URL:http://media.excite.co.jp/book/presents/miura/これを読んでおけば、『村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』の評論部分は読まなくても良い気がするな。それから二人は、自分たちの思想を表現するには翻訳が一番ふさわしいことに、潜在的に気が…

三浦雅士『村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』新書館

村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ作者: 三浦雅士出版社/メーカー: 新書館発売日: 2003/07/10メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 6回この商品を含むブログ (24件) を見る 最近の日本の文学には、「村上春樹の小説」と同様、「柴田元幸の翻訳」が大…

笠井潔、加藤典洋、竹田青嗣『村上春樹をめぐる冒険』河出書房新社(ISBN:430900699X) ※現在、品切れ中のようです

「村上春樹」と彼が描いた「1980年代の日本」をめぐって、村上春樹と同世代の批評家3人が交わした鼎談が収録されている。この鼎談自体は、1990年(昭和天皇崩御とベルリンの壁崩壊の1989年と、湾岸戦争の1991年の合間)に行われた。ここで3人が「村上春樹…

加藤典洋『アメリカの影』講談社学術文庫(ISBN:4061591827)

1985年に刊行された、加藤典洋の第1評論集。江藤淳が田中康夫『なんとなく、クリスタル』を誉め、村上龍『限りなく透明に近いブルー』を全面否定した事実から始まる「アメリカの影」、'60年代〜'80年代の東京郊外を舞台にした小説を論じた「崩壊と受苦」、…

大塚英志「スターバックス文学論(なんだか)」小説TRIPPER 2003年秋号

また例によってわざと物議を醸すような書き方をしているが、提示されているのは興味深い問題ではある。'80年代文学で行われていた方法、例えば商品ブランドのような、時代に特有の「固有名」の羅列の中に人物を描くことジャンル違いの分野からの引用を多く行…

ダグラス・ラミス

上を書いた後で、ダグラス・ラミスの著作を検索してみたら、池田香代子『世界がもし100人の村だったら』(ISBN:4838713614)の対訳を手がけたりしているらしい。その他の著作には 『経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか』平凡社(ISBN:45827…

「現代思想 1982年8月号:特集=現代アメリカの思想」青土社

古い雑誌だが、個人的に「アメリカ」について考える上で重要な記事が載っているので紹介しておきたい(まあ、ネタ元みたいなものです)。当時まだ日本でもそれほど知られていなかったアメリカの思想家(と言っても、第2次世界大戦中にヨーロッパから亡命し…

アメリカ・ブックガイド

ちょっと前に紹介した坪内祐三『新書百冊』の第四章なんかも参考になると思うが、「アメリカ」に関するブックガイドとして個人的に利用してきたのは、『別冊宝島36:アメリカを読む本』である。 これは、50ほどのテーマについて、各評者が2〜4ページほどの…

ジョン・スタインベック『アメリカとアメリカ人』平凡社ライブラリー(ISBN:4582764436)

ノーベル文学賞も受賞しているアメリカの作家=スタインベックの最後の作品。小説ではなく、アメリカをテーマとしたエッセイ集である。原著は1966年、訳書(サイマル出版会版)は1969年の発行で、スタインベックは1968年に死去している。 本書は全9章から成…

仲俣暁生「極西文学論序説 (2)」(「群像」2003年10月号)

仲俣氏には『ポスト・ムラカミの日本文学』(ISBN:4255001618) という著書があるが、今回は明確に「村上春樹批判」である。批判点を抜き出すと次のような感じになるだろうか。 村上春樹は「アメリカ」を、自分自身を「個」として確立するための点として必要と…

All Music Guide (http://www.allmusic.com/)

洋楽方面で気になるアーティスト/アルバムがあって、その信頼できる評価が見たければ、ここを探してみると良いだろう。レビューはすべて英語だが、各アルバムの★の数を見るだけでも十分に役に立つ。★3つぐらいが標準で、★4つなら十分に聞く価値があり、★…

ウォーレン・ジヴォン "The Wind"

'70年代からコンスタントにアルバムを発表してきたアーティストのラストアルバム。ウォーレン・ジヴォンは昨年9月に肺癌にかかっていることを公表していたが、今年9月7日に逝去。ちなみに本作がリリースされたのは8月26日である。 個人的には、実質デビュー…

数学ブックガイド

エンターテインメントや、文系の書物に比べると、理系のブックガイドというのはあまり存在しない。そのせいもあって、高校時代に理系と縁がなくなった人が、また自分で理系の学問を自分なりに勉強する、ということがやりづらいことになっていると思う。 私の…

高木貞治『数学小景』岩波現代文庫(ISBN:4006000812)

『解析概論』で有名な著者の一般向け数学書。著者は、戦前に世界でも認められる最前線の研究を成し遂げつつも、『解析概論』のような今でも読み継がれる(さすがに現在では「古典」という意味合いが強いのは仕方が無いが)大学教育レベルの良書や、『数学小…

橋本治『革命的半ズボン主義宣言』河出文庫(ISBN:4309402976)※'91発行、オリジナル単行本は'84発行

「今度の夏は、みんなで半ズボンをはこう」と主張する本。というと、何かの冗談みたいだが、逆に「なぜ日本の成人男性は夏に半ズボンをはかないのか」という問いを発することから、日本の戦後以降の社会において「大人であること」「子供であること」「自信…

クラインの壷

山形浩生の「クラインの壷」のどこがまずいかと言えば、 浅田彰がどう間違っているかの指摘に偏している(はっきり言ってくどい) 「クラインの壷」の説明に「3次元版擬似クラインの壷」のイメージを利用しすぎている(つまり、本当の「クラインの壷」と「…

山形浩生『山形道場』イーストプレス(ISBN:4872572483)

『新教養主義宣言』に続く、2冊目のエッセイ・評論集。著者のホームページなど、webで読める文章も多く収録されているが、「本」としては若干まとまりに欠けるので、もう少し特定のテーマで文章がたまるまで、単行本化は待ったほうが良かったかもしれない(…

山形浩生はいかにしてつくられたか(excite books インタビュー)

http://media.excite.co.jp/book/interview/200308/ 私の世代だと、たぶんこちらの方が自分史的にもしっくりくるだろう。私の場合は、「SF」のところに「ミステリ」と「Rock」、「経済」のところに「コンピュータ」が来るわけだが。

坪内祐三『新書百冊』新潮新書(ISBN:410610010X)

ブックガイドのようなタイトルだが、自分の読書歴を同時代の歴史と重ねて記述した本。著者は `58年生まれなので、著者の十代末(70年代後半)以降の日本の出版、思想状況と「神保町」の変遷が見てとれる。 私は `64年生まれなので、言われれば当時は確かにそ…

仲俣暁生さんのwebページ

はてな日記:http://d.hatena.ne.jp/solar/ sora tobu kikai:http://www.big.or.jp/~solar/? 私が仲俣さんのページに最初にたどり着いたのは、http://www.kt.rim.or.jp/~h_okada/fb.html からだったりしますが。

仲俣暁生「極西文学論序説」(群像2003年9月号)

「見下ろす視線(神の視線)」と「見上げる視線(我々の視線)」を文学作品、評論の実例から論じ、それを「極東(与えられた私たちの位置)」と「極西(私たちの位置の別の可能性)」に重ねる試み、なのかな(まだ連載中なのでハッキリしない)。両者の比較…

今のところ、思い付きをベタベタ貼り付けているだけで、半分気分転換みたいな感じでやってます。ネタに詰まったら、あっさりここからは撤退するかもしれません。

大塚英志責任編集:雑誌「新現実 Vol.2」

次のような文章が載っているらしい。読んでいて、プロレス団体が乱立し出した頃のことを思い出してしまった。 「経営感覚ということ」 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/feature/-/452287/250-2021290-9440205

大塚英志「文学自動製作機械」(群像2003年9月号)

なんだか妙なテキストである。要するに、「最近、既存作品のサンプリングや構図を変換するだけで作品を仕上げてしまう作家がエンターテインメントの分野からかなり出てきているが、その中で「舞城王太郎」だけを「文学」として取り上げ、プッシュしている理…

『動物化…』出版後の東浩紀の主な対談(2002年分)

http://www.t3.rim.or.jp/~hazuma/oldinfos/2002.html より抜粋。 ?桝山寛:“動物化=ゲーム化”する現代のエクスタシー(『Internet Magazine』3月号、インプレス) ○斎藤環:工学化する社会/動物化する人間(『大航海』第42号、新書館) ?あさのまさひこ…

東浩紀『動物化するポストモダン』講談社現代新書(ISBN:4061495755)

現代の若者のいる状況は「ポストモダン(大きな物語の消失後の世界)」そのものであるということを、「動物化」という言葉をキャッチに使って説明した本。「動物化」というのは、多少物議をかもす言葉だが、「社会化」の対概念と考えるとしっくりくる。30代…

東浩紀・大澤真幸『自由を考える』NHKブックス(ISBN:4140019670)

本来は『動物化するポストモダン』と対になる本。東浩紀の思考のベースには、「二重性」(デビュー論文には「コンスタティブ/パフォーマティブ」という対概念があった)があるような気がするが、例えば「公/私」「大きな物語/小さな物語」という対で言えば…