坪内祐三『新書百冊』新潮新書(ISBN:410610010X)

  1. ブックガイドのようなタイトルだが、自分の読書歴を同時代の歴史と重ねて記述した本。著者は `58年生まれなので、著者の十代末(70年代後半)以降の日本の出版、思想状況と「神保町」の変遷が見てとれる。
  2. 私は `64年生まれなので、言われれば当時は確かにそんな感じだった、というのはわかるのだが、著者と同じくらい思い入れが持てる本というのはあまりなかった。辛うじて、「ニューアカ」のころの本を友人たちはよく話題にしていたな、というぐらいのものである。
  3. で、「ブックガイド」としてどうかというと、基本的に良書が取り上げられているとは思う(そのあたりは、信用して間違いないだろう)が、一般の人にもそれなりに役に立つのは「第四章 講談社現代新書アメリカものは充実していた」ではないだろうか。60年代以降のアメリカのポップカルチャーは、日本にも映画、音楽を通じてわりと伝わっているような気もするが、その全体像が的確に伝わっているかといえばかなり疑問だ。そのあたりを埋めるのに適した本がいろいろ紹介されているので、「映画」「音楽」以外のアメリカ現代文化に興味のある人には役立つ情報が得られると思う。ついでに各章から読んでみたい本を1冊。