よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ(全4巻)』(新書館)

フラワー・オブ・ライフ (1) (ウィングス・コミックス)
フラワー・オブ・ライフ (2) (Wings comics)
フラワー・オブ・ライフ (3) (ウィングス・コミックス)
フラワー・オブ・ライフ (4) (ウィングス・コミックス)
最初の1、2巻は普通に高校を舞台にした学園コメディ風なのだが、3巻からは、あるテーマを中心に話が周り始める。注意して読むとわかることだが、3巻の各話には「感情を表す(というか爆発させる)」シーンが含まれ、4巻では「あることを相手に伝えるか伝えないか(大抵は迷う)」というシーンが含まれている。

さらに4巻では話が進むにつれ、「大人」という言葉が繰り返し現れるようになる。そして、「大人」のイメージの一つとして「自分のことは自分で決められる」という言葉が出てくる(P91)。しかし、「自分のことは自分で決める」といっても、どのようにそれを決めていくのだろう?

3巻で登場人物たちが見せる「感情の発現」は、実に高校生らしい、微笑ましいという感じのものばかりだが、4巻で「相手に伝えるか伝えないか」という内容は徐々にハードなものになっていく。このマンガの主人公格の一人である「春太郎」は、隠し事のできない、嘘のつけない、真直な性格の男の子で、自分の周囲の人間もそういう人間であるということを疑っていない。4巻の後半は春太郎が中心となる話だが、彼はその中で、「伝えること」と「伝えないこと(これはつまり隠し事に重なる)」の重みを知ることになる。

彼は、また、最終話で新しく知った事実を友人に「伝えるか伝えないか」を「自分で決める」ことになるのだが、それは最後の独白のような形になる。その独白が意味するのは、「自分で決める」=「自分がしたいからそうする」ということでは決してなく、「自分の行動が周囲にどう影響を与えるか」「伝えたことを相手はどう受け止めるか」を考える、言い替えれば「自分が行うことに影響を受ける人たちのことを自分と同じように考えることができるか(少なくともその努力をしようとするか)」ということになるだろう。そして、その「自分の広がり=自分の周囲までを含めて自分と同じように考えること」こそが、春太郎にとっての「大人」の意味となるのである。

(2008/04/02)