よしながふみインタビュー

昔の「Webとらのあな」に『フラワー・オブ・ライフ』連載時のよしながふみのインタビューが載っており、今でもインターネット・アーカイブから読むことができる(こちら)。同じところから『ハチミツとクローバー』連載時の羽海野チカのインタビューも読める(こちら)のだが、併せて読むとなかなか興味深い。

  • どちらも「大人になること」をテーマにしている
    • よしながふみ
      Q:この作品で一番描きたいことって何ですか? A:子供が大人になるってことに尽きるのかな。
    • 羽海野チカ
      Q:最後に読者へのメッセージをお願いします。A:…みんながどういう風に大人になっていくのか見て欲しいです。「大人になるのは恐い事じゃないよ」というのが私から言いたい事です。
  • どちらも結果として、群像劇を指向することになる
    • よしながふみ
      それまで3人だけの話だったのがクラスみんなの話に、群像劇になることが出来たと思います。この話ではやっぱり春太郎の意見っていうのは一意見でしかないみたいな、なんかこうみんなはみんなでそれぞれバラバラのことを考えているんだよっていう感じのことが言いたかったんじゃないのかなと思うんです。
    • 羽海野チカ
      (羽海野さんのマンガの)先生はどのキャラクターにも愛情を持って描かれていたので、ちょっとだけしか登場がしないキャラでも単純に脇役として、敵役として、主人公の引き立て役として存在しているんじゃなくて、理由があって生きているんだなっていう事をすごく感じたんです。だから「ハチクロ」も「脇役として登場する人物はなくそう。全員自分の人生を生きていることを表現しよう」といきなり大きな目標を持って描き始めました。

フラワー・オブ・ライフ』の感想の最後に書いたことは、要するに「相手を尊重する」ということになりますが、それは「好きにしたら」とか「あなたのやり方に文句をつけるわけではない」というふうに「相手が自分と関係ない」と暗黙に前提してしまうのではなく、逆に「これからも自分と関わっていく人たちが、自分とは対立する行動・意志を持つことも積極的に認めていく」ということでもあります。

それは「自分以外の人間を、自分自身の投影、分身、理想などとして見る」ことからは決して生まれるものではなく、そのため両作品では「それぞれがバラバラの考えを持つ」「全員が自分自身の人生を生きている」ことが描かれる必要があったのではないかと思います。