東浩紀・大澤真幸『自由を考える』NHKブックス(ISBN:4140019670)

  1. 本来は『動物化するポストモダン』と対になる本。東浩紀の思考のベースには、「二重性」(デビュー論文には「コンスタティブ/パフォーマティブ」という対概念があった)があるような気がするが、例えば「公/私」「大きな物語/小さな物語」という対で言えば、『動物化』が「私・小さな物語」の側の話で、『自由を考える』が「公・大きな物語」の側の話である。現代人の多くはこの2つに大きな分裂を感じているという点で、2人は意見の一致を見ているが、大澤真幸は、「弁証法的」と言われるように、二つの対立・対照から第三のもの(正−反−合の「合」)」を見出そうとするのに対し、東浩紀は二重性をそのまま肯定する、というか、二重性にこそ本質があると考えているように感じられる。
  2. 二重性と言えば、俺的には「橋本治の二筋の論理」なわけだが、あれは軸を2つ持っていれば、物事の位置付けがしやすくなる、という話なのであまり関係ないかもしれない。
  3. 「自由」の具体的な内容は最後の方まで行かないと出てこないが、要するに現代では物事の評価軸というのは出尽くしていて、現代人はその尺度で勝手に計られた上、「こういう人はこういうのが好きだよね」と決め付けられたり、新たな消費を迫られたりする。そういうのはある意味便利だが、自由意志という面から言えばどうよ?というようなことだろう。しかしまあ、既存の分野では過去の遺産を利用しない手はない。その場合は、いろんな要素の組み合わせを楽しむという点に自由度はあるだろう。出来合いの「軸」に満足できない場合は、全く新しいジャンルを自ら作ってみるのも一つの手だ(もちろんそれは簡単なことではない)。

※2ヶ月ほど前に読了。再読せず、記憶のみで記述。なので間違いもあるだろう。