よしながふみ『西洋骨董洋菓子店』全4巻 新書館

西洋骨董洋菓子店 (1) (ウィングス・コミックス)
西洋骨董洋菓子店 (2) (ウィングス・コミックス)
西洋骨董洋菓子店 (3) (ウィングス・コミックス)
西洋骨董洋菓子店 (4) (ウィングス・コミックス)
男4人だけで営業している西洋菓子店「アンティーク」。
その店を舞台に繰り広げられる人間模様を描いたコミック。

前半はほぼコメディと言っていい内容だと思いますが、2巻の終りで一人の登場人物の秘密が明らかにされてからは、結末に向かって一直線に話が進んでいきます。そうした中で、最初は「とぼけた」設定に見えたもの(「なぜケーキ屋なのか」「なぜ深夜までの営業なのか」「なぜヒゲなのか」といったこと)が徐々に閉じていき、一つの出来事に集約されていく様子は、出来の良いミステリに通じるものがあると思いました。 こちらの著者インタビュー(※既にリンク切れなのでインターネットアーカイブより)を読むと、これらがキチンと計算されたものであることもよくわかります。とりあえず一部分だけ引用。

エンタテインメントには、ある程度の驚きが必要で、それが物語の順序を入れ換えるだけで生まれてくるんなら、駆使しちゃおうと

それと、この物語の主要登場人物たちは、それぞれに心に「深い傷」を負っているのですが、それを「何かをしない/できないこと」の言い訳にするのではなく、生きる/仕事をする上でプラスなものとしている点が読後感を良いものにしているようにも思います。そういう意味で、私はこの物語のラストシーンがとても好きなのでした。

(2002/12/28)