クラインの壷

山形浩生の「クラインの壷」のどこがまずいかと言えば、

  • 浅田彰がどう間違っているかの指摘に偏している(はっきり言ってくどい)
  • クラインの壷」の説明に「3次元版擬似クラインの壷」のイメージを利用しすぎている(つまり、本当の「クラインの壷」と「擬似クラインの壷」を混同する読者が出る可能性がある)
  • 「擬似クラインの壷」の「入り口」を特別なもののように思わせる危険がある(特別なのは継ぎ目であって、入り口のように見える部分はトポロジカル的には意味が無い)

クラインの壷」を視覚的に実に鮮やかに説明してくれるページがあるので、紹介しておこう。

この下のほうのアニメーションを見るとよくわかると思うが、メビウスの輪が平面をねじって作った「裏も表も無い奇妙な平面」であるように、クラインの壷というのは空間をねじって作った「内側も外側も無い奇妙な空間」なのである。「壷の入り口に球を入れたら」という議論は「入り口がない」のだから意味が無いし、「循環する/しない」で言ったら、メビウスの輪の連想から「循環する」の方が普通はわかりやすいだろう。