季刊「理戦:特集リチャード・ローティ」74(2003年秋号)

特集の中から、

を読みました。最初の2つは談話を文書化したもののようです。
野家啓一:アブノーマル・フィロソフィーへの挑戦」は、著者が1979〜80年のアメリカ留学時にローティの指導を受けた経験から始まり、ローティとの個人的な交流を絡ませながら、ローティの思想を簡潔に記したもので、ローティ入門として良いテキストだと思います。
北田暁大:「徴候」としてのリチャード・ローティ」は、「世界」11月号所収の「嗤う日本のナショナリズム」とあまりに重なる部分が多いので、ちと驚きました。これを読むと、「嗤う...」の中の「2ちゃんねる」が著者にとって、単なる観察対象/分析対象ではないことがわかると思います。あそこで書かれている「アイロニズム」「ロマン主義」を、北田暁大は、まずローティの中に見ているのです。そして、ローティの「アイロニズム」には個人的に魅力を感じる・共感する部分もあること、「アイロニズム」が「ロマン主義」を生み出し、それが「ナショナリズム」に結びつく傾向について真剣に考える必要があると考えていることも語っています。「嗤う日本のナショナリズム」に興味を持たれた方は、こちらも読んでみると面白いでしょう。
仲正昌樹:「民主」と「愛国」のプラグマティズム」は、ローティの思想を解説しながら、それを「アメリカ」の伝統(ジェファーソンやデューイのプラグマティズム)と結びつけ、更に現代における「デモクラシーの帝国としてのアメリカ」の問題につなげた論です。仲正昌樹は、「情況」11月号の加藤典洋の論と続けて読んで、「書き手の声」を聞き取るのが上手な人だな、という良い印象を持ったので、まとまった著作も読んでみるつもりです。