仲俣暁生『極西文学論』晶文社 極西文学論―West way to the world作者: 仲俣暁生出版社/メーカー: 晶文社発売日: 2004/12/25メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 23回この商品を含むブログ (61件) を見る

  1. 前著『ポスト・ムラカミの日本文学』と同様、日本文学を題材に同時代の日本文化を描写しようとしたもの。前著に引き続き、現在の日本文学(=日本文化)は「アメリカ文化」の影響下にあり、「過去の日本文化」からは断絶している、という視点を継続・発展させた論で、タイトルの「極西」とはアメリカから見た日本の位置である。
  2. しかし、「アメリカ」と「日本」という地勢的な対比以上に、本書で重要なポイントとなるのは、「垂直的視線と水平的移動」「見ることと書くこと」の対比である。著者は、前者に懐疑的で、後者に身を置こうとする。これは「批評家」的立場と「表現者・創作者」的立場の対比とも言え、後者の立場に立つことは、現代日本を共に生きよう/作っていこうという意志の現われのようにも思える。
  3. 逆に、批評家的立場(と言うより受動的立場、苦闘することを回避する立場なのかもしれない)は忌避されるわけだが、どうも必要以上に「悪いもの」とされているようにも感じられる。例えば、「ハイ・イメージ」に関する吉本隆明批判はどうだろう。見下ろす・俯瞰する「視線」をそのまま「態度」に置き換えて批判している(「見下ろす視線」にプラスの価値を見出すこと=他者を見下ろす態度をとること)ように読めてしまうが、単に「俯瞰する視点」はツールとして便利、ということではダメなのだろうか。前著の感想として、著者は「「敵」の存在を想定している」のではないか、と書いたが、本書では、「敵」がより具体的なものとして存在しているように思えた。